こんにちは!やまスク事務局の北村です。
山岳気象講座を開催することができて本当に嬉しいこの頃です。
ほとんどの気象遭難は避けられると言われています。低体温症、沢の増水や落雷など、どの季節にも自然の中に行く以上、気象のリスクは潜んでいます。
気象リスクを学ぶというと楽しくなさそうですが、もちろんそれだけではなく山へ行き空を見るのが楽しくなる講座にしていきたいと想います。
山岳気象講座を通じて、多くの方が山の天気に親しみ、もっと安全に楽しんでいただけるようになると幸いです。
「山の天気にだまされるな!」、皆さん読みました?
本日は書籍「山の天気にだまされるな!気象情報の落とし穴を知ってますか?」をご紹介します。
気象遭難のほとんどが避けられる遭難である。自分だけの命ではない。せっかくの楽しい登山を悲劇で終わらせないためにも、天気予報の特徴をよく知り、天気を学んで「よければこうなりそうだけど、悪い場合はこうなる可能性がある」と幅を持って解釈し、悪い場合のリスクにも対応できるように準備して登山に出かけよう」-第二章より
高い山に登るにはどうしても1泊2日、2泊3日などの複数日程での行動が求められ、その全ての日で天気が良い、ということは期待しづらいです。
「山の天気は悪くなりうるもの」「でもその気象リスクをうまくハンドリングして登山を楽しみ、無事に下山する」そういう登山力を身につけませんか?
著者は山岳気象予報を業務とする株式会社ヤマテン代表の猪熊隆之氏
本書のおすすめポイント1:あのサイトの天気予報は天気予報ではない?
「あの〇〇というサイトの山の天気予報は全然当たらないね」そんな話をSNS上で目にします。
それもそのはず、実はあれは「天気予報」ではないのです。
実際サイトをよく見てみると天気予報とは書いてありません(末尾の方に注意書きが書いてあります)。
そういったサイトの情報をもとに「天気が悪いと書いてあったから行かなかった(でも実際は天気が良かった)」
「天気が良いと書いてあって山に行ったら天気が悪く大変な目に遭った」なんてこともあるでしょう。
そもそも天気予報ではないため、当たるも当たらないもないわけです。
ちゃんと山の天気予報をしているサイトかどうかを見分ける方法は、本書の第2章をぜひお読みください。
本書のおすすめポイント2:登山前の計画づくりと地図読みと、それらを駆使した登山中の判断
5章、6章、7章、8章は、過去に実際に起こった気象遭難を例に、それをどうすれば避けられたか、という分析を行っています。
これらの章は、以下の登山者にぜひ一読をおすすめしたいです
- 独学で登山してきた方
- 「登山届は書くけど登山計画はちゃんと立てたことがない」という方
5章では遭難を避けるために「登山の際に確認すべき13ヵ条」がされています。
この13ヵ条の中でも、私が特に重要だと思ったところが以下です。
④ルート上のリスクを(*中略)想定
⑤登山前に2万5000分ノ1地形図から、現在地を確認するポイント(*中略)を決めておく
こちらは登山前の重要なポイントです。
計画づくりは登山のシミュレーションです。登る前にいかに準備しておくか、ということの重要さがよくわかる箇所です。
⑧出発時に雲を観察し、大気の状態や上空の風向き、風の強さを推測する。
(*中略)
⑩森林限界、尾根に出る手前、稜線に出る手前で、その先に進むかどうかの判断を下す
(*中略)
⑫④で想定した、地形上や気象上のリスクについて、現場での判断と対応
⑬⑧以降を繰り返しながら、登山する
こちらが登山中の重要ポイントです。
計画時点で想定したことに加え、最新の現場の情報を取り込み、常に判断・対応し続ける。
これは気象遭難の対策だけでなく、登山一般において必要な姿勢と言えるでしょう。

*2014/05/04 12時頃に西穂高沢で撮影した日暈。巻雲や巻層雲によって日暈が生じます。これらの雲は前線の到来を知らせるものです。つまり、日暈が見えるということはその後天気が崩れて来る可能性が高い、ということです。そして実際に、その日の午後から天気は崩れ、雪になり、遭難するパーティも出てしまいました。
「岳沢小屋ブログ 5月5日、冷たい雨や雪・・・」
5~8章ではこの13ヵ条に従って、低体温症、沢の増水、落雷、突風による遭難事例を分析していきます。
「あの遭難も、いくつも引き返せるポイントや避けられるポイントがあったんだなぁ」というところから、普段の自身の山行にも活かせる知見が得られます。
まとめ:「山の天気だけ」の本ではない
このように「山の天気にだまされるな!」は山の天気だけでなく登山の実践的なノウハウが含まれています。
書名から「天気は難しそうだな」と思わずに、ぜひご一読をオススメします!
登山力アップのためにも、ぜひお読みください
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