山のグレーディング活用セミナーには登山を安全に楽しむヒントがいっぱいだった!

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2017年12月17日(日)に東京にて開催された「中央日本四県サミット グレーディング活用セミナー」の動画を許可を得て撮影してきました!その動画を公開します!

山の現場にいる方々の生の声を聞ける貴重な機会。各県のルート情報はもとより、危険情報、登山を安全に楽しむためのアドバイスも多く、登山者の皆さんにはぜひ動画を見て、今後の登山ライフに活かしてほしいです!

「山のグレーディング」、ご存知ですか?

〇長野県では山岳遭難件数が4年連続過去最多を更新するという深刻な事態が続き、平成25年の遭難件数は300件 (遭難者数328人 うち死亡・行方不明者数74人)に達しました。平成26年は272件、平成27年は273件、平成28年は272件の発生となり、依然として高い水準です。

〇登山者の増加に伴い、「体力の低下を意識しない中高年者」や「山の怖さを知らない初心者」が、県内の急峻な山岳にも訪れ、遭難事故増加の一因となっています。

〇県内の登山ルートの難易度を情報提供し、登山者が「自分の力量にあった山選び」をすることにより、山岳遭難事故の防止に役立てるものです。 

というものです。
簡単に言うならば、以下の通りです。

  • 山のルートに体力度と技術度の評価付け=グレーディングを行った
  • 登山者は、そのグレーディングと自分の力量を照らし合わせて、無理のない、楽しい登山に活かしましょう!

山のグレーディングの説明と活用法、それに加えて中央日本四県(長野、新潟、山梨、静岡)のオススメのルートを、山の現場にいる方々が説明するイベントです。

それでは講演・講義の動画を見ていきましょう!

講演「山のグレーディングと登山体力セルフチェック」長野県山岳総合センター アドバイザー 杉田 浩康 氏

やまスク的ポイント:自然は忖度しない!

長野県山岳総合センターの杉田 浩康 氏のご講演。
山は、登山経験が豊かな人に対しても未熟な人に対しても平等に優しく、平等に厳しいものです。
だからこそ、山を知り、自分の知識・技術・体力が山を安全に楽しめるか判断する、ということが大切になってきます。
もしその判断が間違っている場合、楽しくなくなります。そしてそれ以上に最悪の場合、死に至ることもあります。
「でも自分では自分の力量を評価できない」、そんな登山初心者はどうするか。そこで山のグレーディングを活用して、難易度が低いところから少しずつステップアップしましょう。
体力度の測定方法も詳しく語られています。ぜひ参考にしてください!

講義「魅力あるグレーディングルートのご紹介」(1)長野県 信州まつもと山岳ガイド協会やまたみ 石塚 聡実 氏

やまスク的ポイント:穂高連峰の展望台、蝶ヶ岳は展望だけでなく、ステップアップにも魅力的

信州まつもと山岳ガイド協会やまたみ の石塚聡実ガイドによる長野県の魅力的なルートのご紹介。選ばれたのは、北アルプス蝶ヶ岳、三俣からのルート(体力度4、技術度B)。
北アルプスに初めて行ってみたいという人には、自分の力量を測るためにも蝶ヶ岳がおすすめです。なぜなら蝶ヶ岳は技術的な難易度は低め、でも標高2,677mと体力はそれなりに必要、という山だからです。2600mともなれば、人によっては高山病も出る高さですね。
力量を測る、なんて書くと面白くない山なのかと思われてしまいそうですが、そうではありません。蝶ヶ岳は迫力ある穂高連峰の姿を北から南まで眺めることのできる展望台。それでいて北アルプスの他のメジャーな山より比較的空いており、のんびりできます。
また、山頂近くまで樹林があり、上高地側は池塘もあり、それらが育む蝶やライチョウなどの生態系を楽しめます。

講義「魅力あるグレーディングルートのご紹介」(2)新潟県 INField中野 豊和 氏

やまスク的ポイント:簡単な地図やグレーディングの評価だけではわからない難しさも。

INFieldの 中野 豊和ガイドによる新潟県の魅力的なルートとして、標高2,454mの妙高山の燕温泉からのルート(体力度4、技術度B)のご紹介。
地形図を見るとわかるとおり、妙高山は外輪山があります。燕温泉からのピストンなら登って下るだけですが、そこから火打山などへ縦走するには、下った上に外輪山を登り返すため、体力的には大変になります。
地元ガイドだからおすすめできる標高1,316mの鉾ヶ岳(体力度3、技術度C)。妙高山よりもかなり低く、体力度では妙高山よりも低いのですが、ルート上に小屋がないため日帰りする必要があります。早出早着が重要になってきますね。

 

中野ガイドのお話からは、地図(とくにアップダウンがどのくらいあるかといった地形情報)、また、ルート上に山小屋などの避難場所はあるか。そういったものを事前に調べることの重要性を改めて感じました。
グレーディングも活用しつつ、色々な情報を組み合わせて、安全で無理のない登山計画を立てたいですね!

講義「魅力あるグレーディングルートのご紹介」(3)山梨県 南アルプスガイドクラブ 猪俣 健之介 氏

やまスク的ポイント:早出早着は自分の身を守るための大原則!

講師は、南アルプスガイドクラブ の猪俣 健之介ガイド。山梨県の魅力的なルートとして北岳(広河原ルート)のご紹介。猪俣ガイドは北岳山荘の小屋番でもあります。
北アルプスと比較すると森林限界が高く、高山植物を含む生態系が豊かな南アルプス。
北岳は山がもろく落石があるとのこと。その不安定な落石に乗ってしまい足をくじく、という事例があるのだとか。
そして「15時までに到着しよう」というアドバイス。15時よりも後に行動不能になると、その時点で救助依頼をしても日が暮れてしまい救助できなかった、という事例も。

 

「もし15時まで救助依頼をしてもらったら、ひょっとしたら助けられたかもしれない、という命がいくつもあった」

 

そんな猪俣ガイドの言葉の重みに身が引き締まる思いです。

余裕を持った計画を立て、行動中も安全マージンがどれくらいあるか管理しなくては、と改めて思いました。

講義「魅力あるグレーディングルートのご紹介」(4)静岡県 静岡山岳自然ガイド協会 三上 浩文 氏

やまスク的ポイント:同じルートも登りに使うか下りに使うかで難しさは変わる!

静岡山岳自然ガイド協会 の三上 浩文ガイドによる静岡県の魅力的なルートのご紹介。
静岡は広く、伊豆の山である猫越岳(体力度3、技術度A)、富士山富士宮口ルート(体力度5、技術度B)ルート、富士山御殿場口(体力度7、技術度B)、荒川岳と赤石岳の縦走のお話。

富士山の富士宮口と御殿場口の体力度の違いは、登山口の標高の違い。富士宮口と比較すると御殿場口は1,000mほど低いため、山頂までの高度差が大きいです。同じ山に登るにしても、どこから登るか、でかなり変わってきますね。

やまスク的注目ポイントとしては、南アルプスの荒川岳から赤石岳への縦走か、赤石岳から荒川岳への縦走のどちらから登れば、より技術的に安全か、というお話。

山のグレーディング上は荒川岳から赤石岳への縦走は体力度8、技術度D。ですが、三上ガイドによると、逆ルートの赤石岳から荒川岳であれば、体力度は変わらず8ですが技術度はCになるかも?とのこと。急な岩場も登りであれば、どこに手足を置くかも見えやすく、滑落の危険も少ないものです。なお、動画内では滑落された方の救助の模様も。

ルート情報を事前に把握した上で、登りで使うか下りで使うか、事前の計画が安全登山に役立ちます。

山の現場の方の声には学びがたくさん!

動画をご覧になっていかがでしょうか?山の現場にいる方々の声には多くのヒントがあったのではないでしょうか。

やまスクでは、山岳ガイドはもちろん、行政をはじめ、山に関わる様々な方の声を多くの登山者の方に伝えていきたいと思います。

「こんな人の声が聞きたい!」「自分のこの声を届けてほしい!」などありましたら、ぜひご意見お寄せください!